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書棚のこと(やっと・その4) [ひぐらし硯 日々のこと]

書棚のこと、お話して、ずいぶんと天に唾する行為をしたものだと後悔しっぱなしでおりました。

棚 (2).jpg新人時代、上司が言いました。「棚整理で5%、気合で5%合わせて10%(売り上げ)アップ」と。当時は少なくとも売り上げの悪さでまず見直されるのは、棚整理がきちんとできているかどうか?でした。

といっても、売れ過ぎているところだって補充も間に合わずガタガタしていたでしょうし、一見してはわからないかもしれませんが、原因究明のとっかかりには必ず言われる言葉でした。

今だとPOSでの数値分析などするかもしれませんね。決して当時でも数字管理をしていなかったというわけではありませんが、今はまずPOSでの数字管理ありきで、それなしでは語れなくなってしまいました。

ここからお話するのは、おそらく、お客様のためというよりも、お店側のこともあり関係ないよということもあるかもしれませんが、もし、興味を持って読んでいただけると幸いです。

買いやすいと売りやすいは相反するものかもしれませんが、表裏一体とも言えます。

理由は3つあります。
1 防犯
2 補充優先
3 マーケティング

1は万引き対策です。指先も心にも負担がない、空気のように軽ければ、当然、盗るハードルも低くなるということになります。それらの対策や細かい内容など、あまり多くは触れずにおきますが、もちろん、店側もそれをよしとして陳列しているわけではなく、セルフ販売である以上お客様にはご確認いただくのが望ましく、苦々しい思いでいることだけは確かです。

2の補充優先は、文庫の出版社別などが一例かと思います。レジで売れれば自動的に発注される便利な世の中でも、機械だけに当てにならないことも現実としてあります。例えば、重版待ちと重なった場合などがあげられます。新刊も点数や日時を揃えていることや、出版社別を意識させる部分もあります。補充をして、常に欲しい時に必ずあるというようにするために、大型書店ではベストかもしれません。

棚改善2 (2).jpgそして、3 マーケティングですが、新人時代の上司の言葉を借りると「陳列は最大の販促だ」なのですが、前回スリップを直さない時期があったのもこのためで、販促も調査もすべて合わせての陳列方法です。

「陳列は~」は、数年ぶりで新作が出るという超のつく大型新刊コミックを、1ヵ月くらい前から島什器(島のようにポツンとある平台)で入荷日を添え展開し、新刊が出たときにコミック、新刊台、島什器に並べた結果が出た際に言われた一言です。

一番売れたのは島什器からでした。だいぶ前から展開していても売れるわけはありませんが、でも、その初日の売れ数は驚くほどでした。どうせ売れないならば、という、結構リスキーなものではあったのかもしれませんし、決してお勧めの作業ではありません。今から思えば、わたしの教育目的だったかも。

棚面陳と呼ばれるものも、これに近い策かと思います。棚で点数出して選択させるか、点数を絞って売り上げを出すか、棚の場合ボリュウムは要りません。即、1冊からでも可能な陳列です。すぐ試せます。

初めて配属されたのが郊外店だったので、出版営業の人は当然として、お客様も少なく、どうしたら売れるのか必死でした。売れるものがさっぱりわからないのです。特に興味もなかったジャンルを担当した時には、素地もないわけで、客層をつかむ以前の問題というのもありました。

で、どうせメンテナンスする時間ならばと、スリップをそのままに、スリップが動くと誰かが手にした証拠、つまりは興味があって手にしたものということで、鉛筆で線を引いて印をつけて戻していました。売れる可能性もあるので、それは極力返品しないようにするという目的もありました。しばらく継続していくと流れがつかめて来て、作業をしなくともよくなっていきました。

以前、先輩書店員の方々にもスリップ活用方法を伺ったこともありましたが、今ではほとんどスリップを触らずにいる方もいらっしゃることを考えれば、あまり参考にならないかもしれません。

とは言え、正解は1つではないし、そうした過去、多くのやり方を応用して自分なりのやり方やコツをつかんでいくと、羽根が生えたようにとても作業が軽くなる瞬間があるように思います。

確かに書店員はバイヤーでもあり、商品を確保する能力に長けていなくてはなりません。それに関する面白いお話もたくさんあります。もちろん、毎日のように失敗を繰り返したからこそ学ぶことも多くあったように思います。

もう死語だと嬉しいのですが、よく書店業界で言われる「棚のセンス」がある、なし、というのは、大ウソだと思っています。新刊を追う嗅覚も必要ですが、メンテナンスの基礎がないと、やがては足元をすくわれると思っています。そういう人たちを過去何人も見ているからです。

ということで、「書棚のこと」を終えますが、こんな立派なことを書いて、自分の今の店もままならずの悲しい状況に、ほんとにいいのかなと、今更ながら書いても考えています。
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