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『わたしの小さな古本屋』 [新着ごあんない(本)]

「自分の好きなことができていいでしょうね」
「全部、ご自分の趣味なのですか?」
「自分のお店がいづれ欲しいと思っているんです」

お店をはじめて、よく言われる言葉ですが、わたしにはよくわかりませんでした。

どうしてお店を始めたのかと言われれば、自分が本を読んでいるのに窮屈な環境だと思ったからで、それは自分が思うならみんなもそう思っているに違いないという勝手な思い込みからですし、もちろん、面白くないものや薦められないものなど、自分のお店でなくともご用意するのはどうなのだろうと思うので、自分のお店なら余計に置きません。ホント言いますと、今だに自分の好きな世界とか理想とかなんて、自分にあるのだろうかと考えてみても、答えは永遠にでないかもしれないなぁと思います。

CIMG5887.JPG育ちがそう考えさせるのか、いつもどこでも間借りさせてもらっているような気持ちです。それゆえ居候ではなんとなく心地が悪く、少し芸のひとつでも持たねばという処世術で、なんとかいままで永らえてきた感じがします。社交的と言われるかもしれませんが、こういうのが社交的というのだろうかと自覚もなくただぼんやりと、受け止めるだけです。

この本は倉敷にある蟲文庫店主、田中美穂さんが「早稲田古本通信」に寄稿したものを中心にまとめられたものです。

「自分の居場所が欲しかった」というくだりを読んだ時、「自分の居場所って持てるものなんだ!」と驚きました。もしかして、あなたはそうした処世術で器用にやれていたからではないか?と言われるかもしれませんが、いえいえ、はなっからないと思っていたからであって、あるよと早く誰でもいいから教えてもらいたかったです。

でも、居場所を持ち続けること、それは簡単なことではないわけで、10年間店以外に仕事をするという経験を続けられるか?と問えば、なかなかできるものではありません。そういう話を聞くので思いとどまってしまう、という人の声もよく聞きます。

それも大変だとは思うのですが、「自分」を店の中に表現していくのも大変だよなぁと思います。ただ、そう言いきるのに自信がありません。本の中でも永井宏さんから「なんかいい」という言葉が出るほど、田中さんの文章は彼女が滲み出ていて、彼女にしかそれは出せないものがあります。

CIMG5891.JPGたどたどしくも揺るぎない自己を抱えつつ継続する強い意思を持つこと。たぶん、揺るぎない自己を抱える時点で、続けなければならなかったからなのかもしれません。

『わたしの小さな古本屋』 
田中美穂 著 洋泉社 ¥1470

特典:ポストカード・栞2枚つき

田中さんから当店御買い上げ御客様用に特典をいただきました。

五っ葉さんといい、蟲文庫さんといい、
御自身の本に合わせたとてもすてきなおまけをお作りになられますね。
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