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武藤さんからのおたより [ひぐらし硯 日々のこと]

武藤良子さんは、当店のブログでも度々ご紹介させていただいております、
雑司が谷在住のイラストレーターです。

武藤さんは毎年年始のあいさつに葉書をくれます。
干支にちなんで昨年ははがきいっぱいに描かれた兎でした。
そのくりっとした眼はかわいらしく、一年、大事に部屋に飾らせていただきました。

今年の初めにあったとき、武藤さんが浮かない顔しています。どうにも今年のはがきがうまくいかない。龍がうまく描けないというのです。デッサン帳をパラパラと開きながら、龍を見せてくれますが、どちらかといえば「タツノオトシゴ?」いや「蛇?」という声もみなさんから上がり、周りの辛口批評を聞きながら、わたしも「龍・・・なのか?」と首をかしげておりました。

一番いいと武藤さんが言う龍も、だったら他の方がマシとおおむね不評。最後には「もう干支やめたら?」「漢字にすれば?」など、茶化してしまうしまつです。しょんぼりとしながらも、これが一番いいんだけどなぁと、まだ呟いているのを聞いても、わたしも仕上がりがどうなるのか想像つきませんでした。

そんな大笑いの年初めもすっかり遠くなった頃。

CIMG5907_copy.jpgこれ。と手渡された一枚のはがき。

「龍だ!」とひと目見てわかりました。

みなさんに配っているそれぞれの口から「あのときの龍だ。へ~」と感嘆の声が漏れ。

本当にあの時のデッサンとなんら変わりがないその龍はみなさんが思わず「へ~」と声が出るほどの、龍になっていたのでした。

きっと武藤さんにはあのとき全体の仕上がりが見えていたのです。白黒の簡単なデッサンでありましたが、わたしたちには見えない色も、模様も配置も見えてたのだな思いました。これって、普通にまあ「あること」と思えばそのままで終わってしまう話ですが、誰にも見えないあるひとつの未来、姿が見える、ただ一人の人なのです。ひとつでも「未来」がはっきりと見えるって、すごいことではないですか?

プロの作り手というのは、きっと、そうしたある一つの未来がはっきり浮かんでは、それを皆にわかるまでに掘り起こす人なのかもしれない。それはやはり選ばれ、限られた人にある才能であるように思います。ただ、限られた人は確かに大事なのですが、そこで「へ~」という声を思わず上げる人がいて、その限られた人も限られた人になりうる。

その共鳴の時を見た気がしました。

そうそう、それと、武藤さんは個々の人にかならず言葉も添えます。
今年のわたしへの言葉はこれでした。CIMG5908_copy.jpg
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