SSブログ

対話をしているのがわかる本 [ひぐらし硯 本のこと]

CIMG5949_copy.jpg本というものは、片方向だと思われがちですが、双方向を感じる本はあります。

「うみざくろ」

この冊子は2人の女性が作ったリトルプレスです。
当店で販売するかどうかは未定です。
(本屋さんなのね)

リトルプレスを作る方には技術があって100を120にする人と技術がなくて120が100になる人と、二種類の人がいます。でも、自分のものにしたいと思わせる本は後者です。それはわたし個人の感想というわけではなく、ずっと、店頭で見続けた感想です。多くの人が、そのバランスのよさで手にし、さらに自分の手に「残したい」と選ぶのです。その手は、いや、その目や心はとても正直なものだと、いつもレジから見ています。

CIMG5952.JPGおそらくただこの本を手にするだけで判断すれば、技術的に未熟で、伝えたい内容はわかりますが120の伝えたいものが技術で100か、よくよく見ると80くらいかもと思われる部分はあります。惜しい!と何度も心の中で叫び、さらに一度は口にしてしまいました。
(ご本人にもすでにお伝えしている内容でありつつも、本当にとりあげてお話しするのは申し訳ないことです)

優れたデザインを日々目にしている人たちには、あまり魅力的に見えないかもしれません。これは本を読む読まないにかかわらず、いや、本を読んでいない人ほど印象の強いデザインを多く目にしているかもしれませんので、そうした場合、残したいと思えるかどうか。

優れたデザインと印象の強いデザインは違います。

例えば、100円ショップで洗剤を見ていると、どうみてもアノ洗剤名が浮かんでしまうモノがあるかと思います。100円なのに、実際使っても効能的にはまったく違うものだと知っているのに、どうしても、効果があるように思ってしまう。すべては印象です。効能や価格の安さまで吹き飛んでしまうほど、目を焼き尽くすまでの印象的なデザインは有効に働きます。

本は洗剤のようなデザインは必要ではありません。むしろ、不要なものです。それは大事な約束。昨今、多くのものが印象によって左右されてきたのにも関わらず、本の世界はずっとその約束を大事にかたくなに守ってきました。

この本を作られた、ひとり、太田さんは、仕事の都合で上五島に4年間住み、多くの人と出会い、この島をどうしても他の人に伝えたいと願い、本にすることを思い立ちいました。画像ソフトなどを使ったこともなく、本を作るためのノウハウもわからないけれど、地元印刷所の方とのやり取りで、なんとか本にし上げることができたとのことです。

CIMG5953.JPG本来、本を作りたいという方の傾向として、多くの方は「自分」のことを念頭に置きます。それはごく自然なことです。で、この五島の本を作りたいと思ったときに、普通おそらくは「手記」と合わせて「写真」の本を仕上がりとして頭に浮かべると思います。画像ソフトも本を作るノウハウもしらないのですから。でも、彼女はそうはしなかった。それは、おのずと、彼女が島の人たちとのやり取りを自分の視点よりも大事に思ったからこそなのでしょうね。ずっとページをめくっていくと、その思いが強く伝わってきます。

それに意外と五島は都会だな~(失礼ですね)と思ったり。おそらくは人々の住み暮らしている周辺を中心にしているので、それほど自然を前面に出していないからなのでしょう。そこもいい人にたくさん巡り合ったという喜びが伝わります。

最後に上げた画像のページは古綿工房といって、布団の綿から糸を作ってくれるというところです。現在古い綿の布団は重くて、お年寄りにはあげおろしが難しいなんて聞きます。打ち直ししてもらうってのも案かもしれませんが、こうして糸に紡いでくれるっていうのもいいですね。都内でもこういう工房あるんでしょうか?

意外にひらけてるゾ、上五島・・・(これまた失礼)と、唸ります。

ということで、販売決定の場合はまたお知らせをさせていただきます。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。