ていねいな暮らし [ひぐらし硯 本のこと]
サイン本で店頭にお出しすることが多いためなのか、
最近、お客様に聞かれるのは、「サイン本は定価ですか?」ということ。
そうですよね。そうだった。
当店では、直接出版社で仕入れたものは定価販売にしています。古書でサインが入っている本を買取した場合は、少し、その分のお値段をいただいております。ちょっと意味わからないと思われると思います。どれが古本か、新刊なんか、わからないと言われることもあるかもしれません。
古書店さんでは、確かにサイン本で高額なものもあるかと思います。誰か決めたかは定かでなくとも、お金を介していくと決まりを決めた以上、金額で意味をつけなくてはならないので仕方のないことです。実は定価商品を扱う書店も、販売促進というために著者さんにサインをいただくことで、本に「色」をつけているわけです。決して無料ではなくサービスの一環としてなので、それに改めて値段をつけることは、古書店さんとして当然かなと思います。
確かに、書店員時代のときに転売目的かなと思しき方もいらっしゃいましたが、これ、案外リスキーなんですよね。一番いい値段で出すために「寝かせる」時間(10年単位の可能性もあり)も必要だったり、在庫スペースの問題もあります。お金儲けだけを考えるなら株を買う方をお勧めします。もとより、お金に敏い方は選択肢にはないかもしれません。うっすら想像するに、ほんとのところは、本を巡る小さな世界でお金が往き来しているんじゃないのかな、と思うことがあります。
文章を書いていながら面倒なんですが、近い将来になれば、定価商品と古書という明確な区別もなくなってくるように思います。その頃にはサイン本の存在も変わってくるかもしれません。
わたしは直接本を作ったことがないし、これからもそういうこともないので、永遠にわからない心境かもしれませんが、本が好きな人の気持ちならわかります。
やはり本は唯一無二のものだと思いますし、時間の経過によって面白みが増すものというものもあります。例えばよくある話、それが復刊されても、またちょっと違う感じがしています。
新しいところでは柳沢小実さんのこの本。彼女のういういしさは、この本の中でしか味わえない気がしています。本全体で真空パックされているかのようで、そのときの柳沢さんも浮かんできます。そういう本ってあるんですよね。時間の経過によって、この本自体に陰影が出て味が増してきますし、それは今現在の柳沢さんの活動によっても大きく左右されるのです。
今、この本は定価商品としては手に入らないのですが、でも、この本を手にしたらそう感じるはず。復刊して、まったく同じということになっても、どういうわけか完全に同じにはなれない(製本上の問題もあります)のが、また本の魅力だと思います。
もともと、本はそういう売り方をされていたんじゃないかと思うので、長々と文章を考えていう必要もないのですが、そういう面白さを、もっともっと若い方に知っていただければ嬉しいなと思います。それに、うっかりわたしも忘れそうな気がしているので、肝に銘じるためにも、書いておきました。
『ていねいな暮らし』 柳沢小実 新泉社
一点ものですので、御品切れの場合はご了承くださいませ。
最近、お客様に聞かれるのは、「サイン本は定価ですか?」ということ。
そうですよね。そうだった。
当店では、直接出版社で仕入れたものは定価販売にしています。古書でサインが入っている本を買取した場合は、少し、その分のお値段をいただいております。ちょっと意味わからないと思われると思います。どれが古本か、新刊なんか、わからないと言われることもあるかもしれません。
古書店さんでは、確かにサイン本で高額なものもあるかと思います。誰か決めたかは定かでなくとも、お金を介していくと決まりを決めた以上、金額で意味をつけなくてはならないので仕方のないことです。実は定価商品を扱う書店も、販売促進というために著者さんにサインをいただくことで、本に「色」をつけているわけです。決して無料ではなくサービスの一環としてなので、それに改めて値段をつけることは、古書店さんとして当然かなと思います。
確かに、書店員時代のときに転売目的かなと思しき方もいらっしゃいましたが、これ、案外リスキーなんですよね。一番いい値段で出すために「寝かせる」時間(10年単位の可能性もあり)も必要だったり、在庫スペースの問題もあります。お金儲けだけを考えるなら株を買う方をお勧めします。もとより、お金に敏い方は選択肢にはないかもしれません。うっすら想像するに、ほんとのところは、本を巡る小さな世界でお金が往き来しているんじゃないのかな、と思うことがあります。
文章を書いていながら面倒なんですが、近い将来になれば、定価商品と古書という明確な区別もなくなってくるように思います。その頃にはサイン本の存在も変わってくるかもしれません。
わたしは直接本を作ったことがないし、これからもそういうこともないので、永遠にわからない心境かもしれませんが、本が好きな人の気持ちならわかります。
やはり本は唯一無二のものだと思いますし、時間の経過によって面白みが増すものというものもあります。例えばよくある話、それが復刊されても、またちょっと違う感じがしています。
新しいところでは柳沢小実さんのこの本。彼女のういういしさは、この本の中でしか味わえない気がしています。本全体で真空パックされているかのようで、そのときの柳沢さんも浮かんできます。そういう本ってあるんですよね。時間の経過によって、この本自体に陰影が出て味が増してきますし、それは今現在の柳沢さんの活動によっても大きく左右されるのです。
今、この本は定価商品としては手に入らないのですが、でも、この本を手にしたらそう感じるはず。復刊して、まったく同じということになっても、どういうわけか完全に同じにはなれない(製本上の問題もあります)のが、また本の魅力だと思います。
もともと、本はそういう売り方をされていたんじゃないかと思うので、長々と文章を考えていう必要もないのですが、そういう面白さを、もっともっと若い方に知っていただければ嬉しいなと思います。それに、うっかりわたしも忘れそうな気がしているので、肝に銘じるためにも、書いておきました。
『ていねいな暮らし』 柳沢小実 新泉社
一点ものですので、御品切れの場合はご了承くださいませ。
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