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書棚のこと(つづくの?・その3) [ひぐらし硯 日々のこと]

その1、2と書きながらも迷い続けておりました。

そもそも、正解なんてないのに、文章になってしまうとまるで正解となってしまうことがあること。みんなそうやっていると言っておきながら、自分の意見をただ押し付けてしまいかねない。それに、せっかく大変な思いをして育ててもらったのに、勝手に外に出ておいてそれを所属していた後輩に還元もせず書くこと。どうなの?というのは気になります。正確に言えば、育ててもらったわたしの会社は合併してしまい、もうなくなってしまったんですけどね。職人としてはどうしても「筋」は気になるものです。いいのかな?と。

とはいえ、全部お話しているわけではなく、お客様にもっと本屋に興味を持っていただきたいのと、過去、諸先輩書店員の方が書かれた本を読むと華やかで、確かに憧れる姿ではありますが、実際の作業がいかに「機能美」を考えているものなのか、知っていただけると嬉しいなと思っています。

本を大事に扱うこと。新刊は新刊だからこそ新刊です。それをお客様に届けることは正解だろ、と思います。なによりもコンディションであること。これからはさらに重要になってくると思っています。

コンディションキープの話ばっかりでつまらん、と思われる方も多くいらっしゃるかもしれませんので、この先(があれば)ちょっと派手めなことも書ければと思います。ただ「ちょっと」派手「め」なんで、あまりご期待に添えぬものかと。自宅の本棚整理術にとお考えの方にも、あまり参考にならないかもしれません。

ということで、今回は、「2 買いやすい」の続きです。

棚改善2 (2).jpg前回、視覚の生理を読みとるとお話しましたが、その先に、もうひとつ読みとらなくてはならないものがあります。買う人、買いたいと思う人は、必ず、自分で手に取るという作業を経なければならないのです。不要の場合は戻すこともあります。

ということは、買う人の「人差し指」にいかに負荷をかけないようにするか。これが一番の課題です。

棚は指1本ですっと抜けるようにすること。具合が悪くなるほど言われた言葉です。指が九の字で本と綱引きするようになってしまったり、抜いたらバタバタと将棋倒しに倒れたりするのは、もってのほか。単行本のカバーは、カバーだけ上に持ちあがりがちなので、それも気をつけること。書いていてもなんだかうんざりな感じですが、すべては、お客様の「人差し指」に負担かかからず、すっと抜けて、レジに持っていっていただくようにするためです。

カバーを破かれないようにするには?戻しても帯が破かれないようにするには?など、買うためにちょっとでも指も心にも引っかからないよう注意を払う、100分の98は頭と体を使って日々書店員は作業をしています。

帯が破れないように何度か棚の前で、いろいろな角度で本を抜いたり出したりしているのを見かけるかもしれません。少しでも、お客様の目を引くよう、より多くの本を陳列したいけれど、破損するのでは売り上げに結びつかないのでシュミレーションしているのです。無意識の行動を予測するのは、目的意識を持って作業している者には計りしれぬものがあり、これを会得するはとても時間がかかります。

さて、遅くなりましたが、画像の黄色い輪の話。

これも棚の美しさを持続させるためのものです。スリップ(本に挟まっている紙片・短冊ともいいます)を一番最後のページに入れ直して棚に差す。スリップが2枚あるなら、別々に。1枚なら一番最後のページに指せば、試し読みする人が邪魔にならないし、2枚の場合1枚抜けても発注可能になるので。

棚背と一緒に廃れつつある作業ですが、1年前に郊外店でその作業している若い書店員さんを見ました。とはいえ、このスリップの入れ直しですが、わたしは故意にやらなかった時がありました。それは、「3 売りやすい」の理由から。なんで「正解」なんてないのです。そうそう。

ということで、この辺で、続きはまたしばらくのことになると思います。
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ryo_phase_d

こんにちは。自宅の本を整理するのとはやっぱり違いますね~。私などは、本棚に一冊でも多くとギッちり詰め込み、奥行きも利用して前後2列にしたり。お気にいりの写真集など集めて隙間もつくって見た目に美しくしたコーナーもいまや溢れる本がいっぱいになってしまっていますwww。お気にいりの本が美しく探しやすく並んだ本棚、憧れです。
スリップを一番最後のページに指し直す心使い、嬉しいです。本棚の前で本を手にとってぱらぱらっとめくってみるときに、スリップが引っ掛かってしまうことはよくあります。こういった書店員さんの細かい心使いや本を痛めない工夫も気付いていないことでした。当たり前のことですが、本を大切に扱うこと心掛けます。書棚のこと、とても興味深く、好い記事でした。こうしてシェアしてくださってありがとうございます。
取り出した本を戻す際には、棚背を揃えるようにします!
by ryo_phase_d (2010-10-15 10:05) 

ひぐらし文庫 4560070512

コメントありがとうございます。

ご自分のお部屋でというよりは、見せるためのお部屋に書棚を置く場合ならば、少しはお役にたてるかなと思います。ダイニングなどに本棚があり、他の方もお招きするような場合は、「にわかブックカフェ」にもなるかもしれません。

お客様には気づかいなく本だけに集中していただけるように、心を配っているので、ご興味いただけるだけで嬉しいです。

レイアウトに関しては、他の小売り業界も研究されていておりますが、型がかっちり決められている場合が多いです。それはアイテム数の多さと同時に組み合わせが無限にあるためなのではないか?と思います。

書店はそれをひとりの担当者が全部行っているというのが他小売り業種とは違っているところだと思います。そこにお店と人の個性がいかされ、画一的ではないため、わかりにくい部分と指摘されることもありますが、それが、また面白いところであるとご理解いただけると嬉しいなあと思います。
by ひぐらし文庫 4560070512 (2010-10-15 15:24) 

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