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書棚のこと(やっぱり・その2) [ひぐらし硯 日々のこと]

大事な3つの、1 見やすい 2 買いやすい 3 売りやすい ですが。

分かれているようでこの3つは密接しており、見やすいことは買いやすく、売りやすくすることで買いやすい環境も生まれるということがあります。売りやすいはついつい繰り上がってしまいがちですが、やはり優先順位としては最後にしたい。それでも継続できなきゃ意味がなく、葛藤しつつも、それぞれの棚を書店員さんたちは管理していることと思います。

書店の「ベストタイム」があるとしたら夕刻6時くらい。一日1便なら朝だけ、2便だったら最終便は2時くらいにはどの書店にも届け終わっています。営業時間の長さにもよりますが、スタッフ休憩を含めると、並べ終わっている時間はそれくらいになります。ちょうど、働く人が「あの本買って帰ろうか」という時間、「今日も楽しかった」で家路についてもらえるよう、一番美しい状態で迎えられるように、書店の一日は動いています。

ということで、今回は、2 買いやすい です。

ここは前回の見やすいと密接になっています。見やすいだけでは買いやすいとはならないのですが、見やすいというのが買いやすさの要なので、それに触れることはとても大事なことなのです。

わたしも思うことですが、「きれい」の基準ってひとそれぞれですよね。「きれいにしろ」といわれても、と、いっつも新人の時は理不尽な気持ちになっていました。でも、一旦、「きれい」の形が身についたら、なんとなく落ち着かない。何が「きれい」かをまず体得する、体でわかることから本屋さん修行は始まるように思います。

棚改善 (2).jpg大げさな演出ですみませんが、棚背を揃えると、本の背がこのように、よく見えます。後ろに「あんこ」をし、手前に出しました。

本というと小説が一般的なのかもしれませんが、ここでは書店のジャンルでいう芸術書で説明したいと思います。小説は版型がほとんど変わらないこと、五十音順で整理されていることが多く、逆のジャンルの方がわかりやすいからです。

左から右、作品年数で考えれば「うめめ」の方が先じゃない?ということも言えなくもない。ただ、「うめめ」より「ウメップ」の方が大きく、隣の大きい本と合わせたほうが「きれい」に見えるので、逆にして大きさを揃えます。うしろの凸凹している部分もまとまっていたほうが、棚の修復作業も負担が少なくすみます。他の理由で順序を変えることが多くありますが、また別に記載することにします。

あらためて申し上げますが、平台で本を探しているお客様は、ニュース性も感じとりたいと思っている人ですが、棚の場合はより専門性を求めていらっしゃるのではないかと思います。

もしかして、書店員にドラマや芸術を求める方もいらっしゃるかもしれませんが、あくまでもお客様がその目的を果たせるようにするために作業しているだけのことです。お客様が真ん中にいて初めて成立するものなので、これから書く内容も、案外、機械的なんだな~と、ちょっとがっかりされるかもしれません。

その旨、ご注意を。

棚改善2 (2).jpg商品は、ブロックごとにスライドしていき、連想させるように誘導して並べていきます。

当店は古書も一緒に並べております。その旨、通常の書店さんとは違う並び方をしておりますのでご了承ください。白い〇は古書部分です。

画面の黄色い線が連想する列です。次の列から次の列へ、数珠のようにつなげていき、自分が探しているものがここにあるのだとわかってもらうように並べます。

棚 (2).jpg左から右の法則はそのまま、概略的なものから詳細な部分へと分野を狭めると、自分の探しているものがこうした内容の、こういう部分にあるからさらに行けばここにあると分かってもらえます。

1段だけでは収まらないジャンルもあるかと思います。もちろん、区切りごとにもつながるように心がけますが、大きな区切りをつけて行きながら、棚に配置していきます。左から右は鉄則ですが、人の目は上から下に行くことも忘れずに、上下の関係も意識して配置していきます。

上の2枚は芸術書ですが、3枚目のこの画像はサブカルです。

棚1本説明しますと、当店の棚は、一番上がサブカル。その間に豆本、そして、芸術書をご用意しています。「え?なんかつながってない感じがする」と思われるかもしれませんが、視覚的な効果なので、文字だけだとちょっとおかしく見えるかもしれません。

前にも申し上げましたが、視覚の生理を読みとって常に配置することが、書店員の仕事です。

すごい人だと、錯視させてものすごく感動させてみたりと、技術的にコントロールできる人もいるかもしれません。わたしが並べているのと、そうした方の並べているのとでは、ぜんぜん輝きが違うというのを経験したこともあります。ただ、すべては基本に忠実な人が素晴らしい仕事をしている人で、ホームランをまれに打つよりも、常に2割をキープすることの方が難しいように思います。

ちなみに2番目画像の黄色い〇は、スリップをどういう風にいれるかの説明をしようとおもってつけておりました。が、あまりに文章も長くなり、それはまた別の回にしたいと思います。

とにかく、見やすいことと一緒になっている買いやすい部分だけは、説明しとかないと。
ということで、また後日。

きっと書店に行って、また違う目で見ていただけたら、嬉しいです。
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ryo_phase_d

こんにちは。書棚のこと、興味深く読んでいます。平台ではニュース性を、棚ではより専門性を、確かにそうですね。私もざっと平台を見て、今話題になっていること、旬に触れ、自分の周辺を埋める感じ、棚を見るときは、もうすこしニッチなというか、一過性でなく、ずっと心に掛っている興味やもっと自分に近い、自分の空間を埋める感じ、とでもいうのでしょうか。「左から右の法則はそのまま、概略的なものから詳細な部分へと分野を狭める」これも納得です。棚を見ながら、自分の探しているものがここら辺にありそうだ、と目を左から右、上から下へと移していき、段々近づいていく感覚、あっ!あった!!というのは、経験でわかります。書店員さんが考えて棚を並べてくださっているおかげなのだなぁ、と実感しました。
自分で欲しい物を探す楽しみ、そこに書店員さんのナイスアシストがある、本屋さん、本当に大好きです。
by ryo_phase_d (2010-10-15 09:19) 

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