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『味見はるあき』 [新着ごあんない(本)]

CIMG3380.JPGみんなで靴を描く美術の授業でのこと。靴を描いたら自分でもほれぼれするくらい、よく描けたので、下書きの鉛筆のままにしたかったのに、課題はその靴に合わせた風景をつけるというものでした。

先生は「ほーうまいね」といってくれたのに、これが完成じゃダメか?と聞けば、この課題はデッサンじゃないと言う。「じゃ、こんどは背景いってみようか」と、あっさりとわたしの肩をたたいて、他の生徒の方に向かってそれきり来なかった。

その時は少し不満にも、いや大いに不満に思ったものでしたが、風景はなんでもいいということで気を取り直しつつふと隣の子を見たら、その子はピラミッドの段差に置いてあるように描いているのです。動揺するほど驚きつつ、それならば負けじと靴に合う風景を描きたいと思っていても、どうにも浮かばない。

木村さんの『味見はるあき』を読んでいたら、そんなことを思い出しました。

この本は、レシピもお店の紹介もありません。でも食べ物の本です。食べ物とその周辺の話です。食べることやものって、おいしいとか、技術とか、何が入っているとか、誰が作ったとかだけじゃないのですね。同じ食べ物なのに、その人の記憶や想像から生まれるそれぞれの物語があって、だからこそ味わえるものもあるように思います。それも大事な味覚の一つなのかもしれません。

ただ偶然に靴が上手に描けたとして、それが人の心を打つものだったのか。
隣の子の方が、よっぽどわたしの心に打つものがありました。

もしかして、読んだら味覚が変わるかもしれません。

『味見はるあき』 木村衣有子 ¥500 

通信販売も承ります[本]
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