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書棚のこと(多分、その1) [ひぐらし硯 日々のこと]

ちょっと前のことでした。

店の本棚をどう並べるのか?という話をお店でしたところ、とっても面白いと言われて意外に思いました。もっと知りたいとも言われて、戸惑いました。

昔の書店員の方は職人気質で「見て憶えろ」と言われることも多かったのですが、それでも10年前くらいには取次(本の問屋さん)主催の養成講座などもあり、教えてもらえるチャンスはまだ少しありました。

最近はどうなんでしょう?数字がはっきり見えてきた分、棚で並べて売るよりも、1点の商品をどれだけ売るかによって決まってしまうことの方が多いかもしれませんね。誰にとってもそのほうが評価の効率がいいしわかりやすいからです。なので、昔と今とでは求められる資質も変化しているのかもしれません。そんな中、書店員の方にも参考になるのかどうなのか、よくわからないまま、説明をするのも変だなと思っています。

しかも、書店の人はそんなこと当然やってるよと思う人多いと思います。

果たしてどれほどの方に面白いと思っていただけるのかわからないのですが、ただ並べるだけの仕事ではないということを知っていただく機会があるのも、またいいのかもしれないと、考え直しました。

自分のレベルは棚に上げて、並べるだけの話をし、それが特殊技能だと判断していただけるかどうかもわかりませんが、ただ、業界外の方に、少しでもその自慢になるかどうかわからない特技を知っていただくだけでも、嬉しいです。

ということで、ここからは並べ方の説明をしたいと思います。

お店の本の並びで守ることは3つです。
優先順位で書き出しますと、

1 見やすい
2 買いやすい
3 売りやすい

1の「見やすい」からお話したいと思います。

当店本棚画像を使用しておりますが、当店では、以前ご説明したように、古書と新刊(定価商品)が一緒になっています。それも踏まえての本の並びであること、ご了承ください。

まずは1の「見やすい」から。

160cmくらいのお客様がちょっと顔を上げる程度の目線。それが「ゴールデンライン」と言われているところです。そこは最初に目がいくところですので、一押しのものや売れ筋のものが入ります。

そこに本の表紙を出して陳列しているお店を見かけるのもそのためです。そこにどう何を入れるかということで、棚1本全体の本の配置(流れ)が決まっていきます。なので、お店に入るときにまずはそこに何があるのかを見ると、その棚を作っている人の思いが体感できるかもしれません。POPがなくともそれは伝わります。時に、性別とか性格などもわかりますよ。

棚 (2).jpg人の目は棚に向かって左から右へ交互に移ると言われています。(注:画像白い線)棚の左に背の高いものを揃えるのも、目が流れやすくなる手として使います。あまりにでこぼこしていると目が散らばりがちになります。一本の棚を流れるように最後まで見てもらうためには、少しでもスムーズにさせることの方が大事なのです。

画面ではそうなっていないので恥ずかしいのですが、本の背の部分を揃える作業も大事なことです。背の文字が読みづらければ、その本に目がいかないし、流れを遮るからです。「時間があれば棚背を揃えろ」と先輩社員に命じられ、延々と「賽ノ河原」のように揃える時期もありました。棚に奥行きがあるところでは、後ろに「あんこ」という棒状のものを挟んで、本が奥に入り込まないようにすることもあります。

無意識のなかできれいなものとそうでないものを見分ける力をどの人も持っていて、おのずと美しい方に目がいくのです。並べるというは常に目線を気にする作業です。目線を流すところと止めるところと、使い分けていくようにしていきます。

棚だけじゃなく平台と呼ばれる台に乗っているものにも、法則のようなものはあります。昔、所属していた先輩社員が『本の雑誌』のどこかの号で「平積み」と呼ばれるものの法則はあるのか?について取材されていたような記憶もよみがえってきました。もちろん版型などの大きさの問題など物理的なものもあるのでその法則は緩やかなのですが、確かにあります。

ちなみに、仮に5列ある平台の後ろから2列目はほとんどがベストセラーで、その列の変化は緩やかです。平台の陳列も面白いな~と思うことがありますが、これもまた別の機会に。

書店員は本を作っているわけではありません。さらに言えば、今日来るものもどういうものともわからないのです。それって仕入れなの?と思われるかもしれません。

日本の出版業界は、多くの方に良質な知識を広めるため、みんなで共有しようとするこの「モノの流れ」の仕組みがあってこそなのです。小売のよくある部分でおかしいんじゃない?という箇所が書店にあるのは、仕組みを守るうえで、仕方のないことなのです。でも、実は本だってその「ものの流れ」に合わせて作られている部分は多く、みなさんが仕方のないところをのんで、仕組みは成り立っています。

ただ、逆手にとれば、お客さまよりもちょっと早いタイミングでお客さまと同じように感動している、ほぼ同レベルでの感覚で販売できていると言ってもいいかもしれません。

一日早まったり、遅くなったり、それによって一日まるまるとっかえひっかえ、その日に来たものを、その日にいらしたお客さまに、一番美しい状態で見ていただくようにしています。

ポイントは
視線は流れるように妨げず、左から右。流れを止めるところと流すところを緩急分ける。

その視線をコントロールできればすべてうまくいくかといえばそうではなく、相性などの問題もあるので確実ではありません。でも、そこに置けば、普通に置くよりもパーセンテージがあがるという場所は生まれます。

ということで、あまりに長いのも申し訳ないので、
途中ですが2の「買いやすい」は、次回に回したいと思います。
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